過去の卒業論文

各年度に提出された卒業論文の一覧です.卒業論文のタイトルをクリック(タップ)するとアブストラクトを見ることができます.ただし,大学院生は卒業論文ではなく実践研究報告書になります.

2022年度

喜多伊吹「小学校外国語科における海外の学校との遠隔授業のためのビデオレター制作活動に対する支援内容の整理」

本研究の目的は,小学校外国語科における海外の学校との遠隔授業に向けたビデオレター制作活動に対する授業者の支援内容を整理することである.そのために,ビデオレター制作活動に対する支援経験のある教師に対して行われたインタビュー内容をもとに,SCATを用いた質的データ分析を行った.その後,分析結果を「授業前」「授業中」「授業後」の3つの場面に分け,インタビュー内容から得られた構成概念をもとに理論記述を作成し,それをもとに「相手の学校とのスケジュール調整」「発表者にボディランゲージを大げさにするように促す」「子どものふり返りから達成感についての個人内評価を行う」などの計10項目のチェックリストを作成した.

黒岩千恵小学校外国語科における海外の学校との遠隔授業に必要な授業スキルの提案

本研究の目的は,小学校外国語科における海外の学校との遠隔授業に必要な授業スキルを提案することである.「コミュニケーション」と「フィードバック」に関するインタビュー内容を,質的分析手法であるSCATを用いて分析した.その分析結果,「英語の簡易化」「実態把握」「コミュニケーションの支援」「形式設定」「肯定的フィードバック(話すこと)」「肯定的フィードバック(聞くこと)」の6つのスキルテーマに整理された.さらに,明確となった各スキルをレベルごとに示すためにルーブリックの作成を行った.

鶴山真規小学校外国語科における情報活用能力の育成を目指した活動事例検索アプリケーションツール の開発

本研究の目的は,小学校教員を目指す学生が,小学校外国語科における情報活用能力の育成を目指した授業をイメージすることのできるアプリを開発することである.そのためにまず,小学校第 5 学年の外国語科の教科書“Here we go!5”(光村図書出版 2019)を分析し,それぞれの単元内で設定されている学習活動を情報活用能力の育成に焦点を当てた活動をデザインした上で整理し,アプリの 構成に必要な要素の分析を行った.アプリの開発には Glide というウェブアプリケーション作成ツールを 用いた.教育学部生を対象にアプリの活用に関する調査を行った結果,小学校外国語科で情報活用能力を育成するということをイメージでき,実際に授業に取り入れたいという肯定的な意見を多く得ることができた. 

中庄司雅也自律的な学習を目指した2次元メタバース空間での授業実践における留意点の検討

本研究の目的は,2次元メタバース空間を用いた自律的な学習時の留意点を,学習者の視点から検討することである.そのために,2次元メタバース空間による自律的な学習をデザインし,実践をとおして得られた留意点を検討した.2次元メタバース空間を用いた模擬授業後の質問紙調査結果を分析したところ,デザインした学習は自律的な学習である可能性が高いことが示された.また,その学びにおける留意点を「非現実的な挙動」「他者の状況理解困難」「特徴的な自由行動」の3つに整理できた.

中村優樹「1 人1台端末活用に関する学級規律を学級開きで実践するプログラムの開発」

本研究の目的は,小学校教員を志す学生が新任の教員として担任を持ち、学級開きを行う際に,端末を学校で使う上での学級規律を定めることを想定し,児童の端末を利用・管理する能力の育成に向けた学級規律の実践プログラムを作成することである.書籍から規律として定めるべき項目を算出し,段階的に児童の端末に関する基本的能力を身につけるための学級規律案やチェックリスト,自己評価シートを作成した.プログラム作成後は実際に教員を志望する学生を対象に評価をもらい,結果として実際の現場での状況が不足しているなどの改善の余地が見られたが,学生にとっても理解しやすい内容であるという事がわかった.

橋詰花華離島地区の学校に赴任した初任者か感じたギャップの整理

本研究の目的は,離島教育に興味関心のある大学生のリアリティショック対策の一助に向け,初任者が離島の学校で感じたギャップを分析し,整理することである.そのために,離島の小学校に勤務している 2 年目の教員 2 名に対し,初任者の 1 年間で感じたギャップについてインタビューを行った.インタビュー結果から1児童に関すること2保護者・地域に関すること3教師・学校に関することの 3 観点で分析し,離島の学校で起こる出来事を整理した.その結果,離島の小学校には 3 観点それぞれに良さと課題があることや,大学で学ぶ離島教育と比べても離島の小学校では予想外の出来事が多いことが分かった.

古川武蔵「教科横断的な見方・考え方で水害を学ぶための小学生用ビデオ教材の開発」

本研究の目的は,社会科で自然災害を学習する第4学年を対象として,長崎で頻発している水害の防災ビデオ教材を開発することである.近年,文部科学省は教科横断的な学習を推奨しており,自然災害を学習するためにはビデオなどの映像教材が必要であることから,本教材は社会科を軸として理科,算数科,保健体育科の内容を,動画作成アプリCANVAを使用して開発した.その後,長崎市の小学校に視聴してもらい,アンケート調査の結果を分析したところ, 開発した教材で4教科の視点で水害を捉えることができる児童がいたため,教科横断的な防災教育を支援する教材である可能性が高いと考えた.

山﨑元汰小学校高学年を対象にした暗号資産・ブロックチェーン 技術を理解するビデオ教材の作成

本研究の目的は, ブロックチェーン技術を理解するために,小学校高学年を対象にした動画教材を開発することである. そのために,小学校第5学年社会科公民的分野の「くらしと産業を変える情報通信技術」(教育出版)という単元の,6時間中6時間目の授業で使用することを想定した動画教材を作成した.動画教材を視聴した大学生に対するアンケート調査を行った結果,小学校高学年の児童がブロックチェーン技術を理解する可能性が高い動画教材を開発することができた.

2021年度

川尻ゆい「自ら興味を持って英語を学ぶ中学生の姿をめざした授業設計と実践」ー実践研究報告書

実践研究では、中学校英語において生徒たちが自ら興味を持って英語を学ぶことのできる授業をデザインし、実践を行うことを目的とした。実践 1 では、生徒がこれまでの学習や生活の中で身に付けてきた知識を活かし、自分自身が考えるユニバーサルデザインを英語で紹介する実践を行った。実践 2 では、イラストカードを通じて日常生活における動作を現在進行形でどのように表すかについて学ぶ実践を行った。実践 3 では、身の回りにおける決まりについて学校・家庭・社会生活の中でしなければならないことを他の人と意見交換しながら表現させる実践を行った。これまでの実践の結果、生徒たちが新しくなじみのない内容と生徒たちの知識・経験との関連性を見出すことのできる授業デザインすることで、生徒たちの興味関心を引き出し、主体的に学習に取り組む姿を見とることができた。

濵松太一「高校物理における科学的に探究する力の育成を目指した授業実践」ー実践研究報告書

本実践研究では,高校物理において課題探究を軸とした授業をデザインし,実践を行うことを目的とした.実践1では,生徒にとって身近な事象を題材とし,仮説設定場面に焦点をあて,熱膨張の原理について実践を行った.実践2では,生徒に身近な課題をミッションとして提示し,重力加速度について探究活動を行った.また,生徒が試行錯誤しながら解決していくようなデザインを取り入れた.さらに,説明仮説から作業仮説に移行する場面での生徒の思考過程を分析した.実践3では,新たな学習内容における探究的な学びについて,浮力の原理を題材にした授業をデザインした.これまでの実践の結果,生徒にとって身近な事象を題材とし,試行錯誤しながら解決してくようなミッション(問い)を提示することで,生徒が身近な事象を科学的な視点で捉え表現する様子が見られた

井手源太「小学校体育科におけるプログラミング教育の授業実践の為の教材開発」

本研究の目的は、教員養成課程の学生がプログラミング教育の一端を学ぶことできる教材の提供である。小学校の体育科とプログラミング教育に着目し、体育の授業にプログラミング教育を導入した指導案を開発した。そして、長崎県で小学校教員をしている2名の方にアンケート調査を行った。アンケートの結果、本教材は児童の技能の差が活動に反映されることへの配慮やすべての子どものための授業立案の仕方に、まだまだ改善の余地が見られたが、教員養成課程の学生向けの手助けのきっかけとなるものであるということが示唆された。これらの意見を元に,最後に本教材の改良を行った。

植木貴人「1 人 1 台端末を用いた夏休みの生活・学習支援」

本研究の目的は,ギガスクール構想によって配布された 1 人 1 台端末を用いて,小学生を対象に夏休みにおける生活支援と家庭学習の支援を行うことである.子どもたちが夏休み期間に生活習慣が乱れ,夏休み明けに登校できない事例や,夏休みの家庭学習に係る保護者の時間的負担や能力的負担が大きいといわれていることを踏まえ,1 人 1 台端末を用いてそれを解消できるよう検討していく.加えて,長期休暇を利用し,日常的に児童がICT 端末に触れる機会を設けることで児童の ICT 端末活用能力が向上することを図る.

江口将海「初年次の教職志望学生の複式授業観察に必要な視点の整理」

本研究の目的は,本学部の1年生が、はじめて複式授業を観察する際,適切な視点を持つことができるようにするためのテキストを開発することである.まず,澤井陽介氏の著書「授業の見方」を閲読し,複式授業の観察に必要な視点を整理した.事前調査では,授業の見方を知るために授業者を通して授業を見ること,子どもを通して授業を見ることで適切な視点を身に付けていけると学んだ.この学びを通して,小学校教員として現場に出た経験があり、複式授業を観察したことのある先生方にインタビュー(以下,事前調査)を実施した.そして,「授業の見方」を閲読したこと,インタビュー結果をもとに,テキストを開発し,本講義を受講する大学1年生が複式授業を観察するにあたって有用なものかどうかについて調査を行った.その結果,現職教員の声を紹介しながらまとめていることや,表や図を用いて説明していることで分かりやすく,有用なものになっているという評価を得た.

大山璃子「小学校外国語科における海外の学校との遠隔授業のための事前チェックリストの開発」

本研究の目的は,小学校外国語科における,海外の学校との遠隔授業のための事前チェックリストを開発することである.そのために,海外の学校との遠隔授業の事例と遠隔授業を行う際に留意すべきことに関する調査を半構造化面接法によるインタビューによって行った.その後,調査結果を基に,海外の学校との遠隔授業における留意点を「授業に対する企画力(遠隔授業の企画・設計)について」「 内容に関する専門性(遠隔授業に関する知識)について」「コミュニケーション能力(遠隔授業中の対話)について」「フィードバック技術(遠隔授業中の子どもへの見取り)について」「学習内容の提示技術(遠隔授業中のデジタル情報発信方法)について」「評価技術(遠隔授業の評価)について」の6つの項目に特化してまとめ,リスト化した.

兒玉夏歩「新たなSNSいじめに対する意思表示を支援する情報モラル用教材の開発」

本研究の目的は,新たなSNS(Social Networking Service)を取り入れたSNSノートながさきの+αの指導テキスト(以下,テキスト)を作成することである.そのための手段として既存の情報モラル教材「SNSノートながさき」を参考にLINEに類似したものだけに特化したものではなく,他の新しいSNSいじめに着目して新たな追加のテキストを作成する.作成したテキストを教員養成課程の4年生を対象にアンケート調査を行い,そのアンケート結果をもとに改善を加え,学校でも家庭でも使える教材を作っていく,調査結果によると,十分教材として使えると思うが,子供たちに分かりやすくするために多少の改善は必要という意見もあり,改善,改良を行い,もう一度評価してもらった上で,その完成したテキストを実際にSNSノートながさきの追加教材としてwebサイトに掲載し,より多くの人に活用してもらえるようにすることが求められた.

砂川蓮太「黙食時に食育のねらいを達成するための島原半島を対象とした動画教材の開発と評価」

本研究の目的は, 黙食時でも食育のねらいを達成するために,小学校第6学年を対象とした動画教材を開発することである.テーマは長崎県島原市の郷土料理「具雑煮」である.まず,郷土料理の由来や食材について知り,食への感謝の気持ちをもつことを目的とした動画教材を開発した.そして,島原市で勤務経験のある教員 2 名にアンケート調査を行った.その結果,支援を要する児童への配慮,教材の内容量について,まだ改善の余地が見受けられたため,動画を改良した.そして改良した動画を島原市立D小学校の 6 年生 78 名に視聴していただき,本教材の目的が達成できているかアンケート調査を行った.その結果,黙食時でも食育のねらいである郷土料理を通して食への感謝の気持ちをもち,地元が好きになるきっかけとなる教材を開発することができたとわかった.

中島美咲「初年次の教職志望学生のための離島教育への意欲を高めるテキストの開発」

本研究の目的は,本学部の離島・地域文化系の 1 年生が離島・へき地教育の現状について学習する際に活用することを想定したテキストを開発することである.そのために,まず,離島の特色,現状,複式授業における基本事項について,論文等での調査と,実際に長崎県内の離島で勤務をされている方へのインタビュー調査(以下,事前調査)を行った.また、テキストの構想を決めるにあたり,複式授業に関する既存のガイドブックの内容や構成について分析を行った.そして,その分析結果と事前調査で得た回答をもとに,テキスト第 1 章「長崎県の離島教育の現状を知る」の開発を行い,本講義を受講する大学 1 年生が離島・へき地での教育や複式教育について学習するにあたって有用なものかどうかについて調査を行った.その結果,情報をコンパクトにまとめていることや、現場の声を反映させていることでより読み手の学習意欲向上につながり,有用なものになっているという評価を得た.

馬場聡美「複式学級への学習支援のための実習生用テキストの開発」

本研究の目的は,本学部の離島・地域文化系の2年生が複式授業での学習支援を実施するにあたり,その準備から実践,振り返りまでのサポートをするテキストを開発することである.そのために,まず,複式支援員の概要,仕事内容及びその留意点について,複式支援員経験者と,支援員を受け入れたことのある担任経験者にインタビュー調査(以下,事前調査)を行った.また,テキストの構想を決めるにあたり,複式授業に関する既存のガイドブックの内容や構成について分析を行った.そして,その分析結果と事前調査で得た回答をもとに,テキスト第4章「離島・へき地の小学校の授業に参加する」の開発を行い,本講義を受講する大学2年生が複式支援実習を行うにあたって有用なものかどうかについて調査を行った.その結果,経験者の声を紹介しながらまとめていることや,写真及び動画を用いて説明していることで分かりやすく,有用なものになっているという評価を得た.

松本真佳「公教育におけるオイリュトミー実践に向けた授業デザイン」

本研究の目的は,感性の育成に重きを置き,知・徳・体のバランスを重視し,生きる力の育成の先駆けであるシュタイナー教育に目を向け,その授業内容の一つであり,シュタイナー教育の大黒柱でもあるオイリュトミーを公教育に取り入れることができるよう,音楽・体育・特別活動の3教科における教科横断的な視点から単元案を作成し,公教育における新たな可能性を見いだしていくことである.単元案を作成するにあたり,オイリュトミーにはどのようなねらいがあるか,またオイリュトミーが各教科の学習目標と合致した取り組みであるか留意しつつ作成していった.長崎大学教育学部の先生方2名に評価をしてもらった結果,様々な懸念材料が浮かび上がりつつも,教科横断的な視点から取り組むことで,公教育においてオイリュトミーを実践することは可能であると言うことが分かった.

山下裕渉「Google for Education を活用した教育実習のためのe-Learning 教材の開発」

本研究の目的は,長崎大学附属小学校へ教育実習に参加する教育学部生に向けた Google for Education の基本操作を学ぶための学習コンテンツを開発することである.そのために教育実習に参加する大学生がどんな知識技能をつけたいと思っているのか明確にすべく,事前に調査を行った.学習コンテンツの内容として Google Classroom を用いた「ストリームへの投稿」「授業ページでの資料作成」「Google Meet の活用」の3つのコンテンツを開発した.学習コンテンツを大学の教授や教育学部の大学生に実際に利用してもらい事後調査を行った結果,すべてのコンテンツにおいて肯定的な意見が多く得られた.事後調査の結果から長崎大学附属小学校へ教育実習に参加する教育学部生が Google forEducation の基本的な操作を学ぶことができる学習コンテンツの開発ができた.

2020年度

山本真太朗中学校数学科において学級全体で協力し合うための対話的学びを取り入れた授業実践」ー実践研究報告書

本実践研究の目的は、生徒一人ひとりが輝ける中学校数学科の対話的な学びの実現をめざした授業デザインおよび実践の成果を報告することである。授業の中で一人ひとりが活躍することで生徒たちが輝けることは筆者のめざすものであり、願いでもある。そのために、生徒同士がお互いの意見を信頼・尊重しながら生徒一人ひとりが活躍できることをめざした対話的な学びのデザイン・実践と省察を繰り返した。まず1回目の実践1では、生徒2人で1つの成果物を作ることをとおしたペア活動をデザイン・実践し、教師からの一方的な教え込みではない対話的な学びが展開できた。その一方、対話の必然性の設定に課題があった。2回目の実践2では、対話的な学びの前に生徒個人が考えた自分の考えをグループ内で比較する学びをデザイン・実践を行い、対話的な活動の必然性を考慮した学びが展開できた。その一方、生徒間の役割が固定化され、特定の生徒の一方的な教え込みがある課題がみられた。3回目の実践3では、1年前の生徒自身のために作問し、そのためのアイデア・工夫を生徒同士で考える活動をデザイン・実践し、作問する生徒の意見とアイデアを提供する生徒の意見の両方の立場を尊重し合う対話的な学びが展開できた。その一方、対話の中でアイデアや工夫が出ないことで有意義な対話にならなかったケースがみられた。以上の結果として、生徒一人ひとりが輝ける中学校数学科の対話的な学びの実現に向けて前進できた一方、学級全体で取り組む学びや有意義な対話による学びを支援するための教師の役割を考え直すという今後の展望も見つけることができた。

新納優奈教員養成大学のグローバル化をめざしたオンライン国際交流学習のモデルシラバスの開発

本研究の目的は,教員養成大学におけるグローバル化をめざしたオンライン国際交流のモデルシラバスの開発である.長崎大学では現在,ハワイ大学マノア校と長崎大学教育学部の間でCOILを計画中である.しかし実際のモデルシラバスは存在しない.よって,ハワイ大学マノア校と長崎大学教育学部の間でCOILを実現するためにモデルシラバスが必要だと考えた.最初に仮のモデルシラバスを検討し,ハワイ大学の教授とハワイ大学の授業を受講したことのある人物にインタビューを行なった.そしてインタビュー結果をもとにデザインしなおしモデルシラバスの開発を行なった.インタビューから,2つの大学の学生同士がどのように協働して学習を進めていくのかや,授業目的に関する改善点を見つけることができた.

2019年度

椋尾宗大郎日常生活を題材とした対話的な学びの中で児童の考えを広げることを目指した授業実践」ー実践研究報告書

〈あらまし〉本実践研究では児童の日常生活を題材として扱い,それについて様々な人と対話することを通して,自己の考えを広げることを目指した授業をデザインし、実践を行うことを目的とした.実践 1 では,児童にとって身近な題材を教材として扱い,児童同士の対話に焦点をあて,社会科・国語科の実践を行った.実践 2では,少人数学級において児童が身近に感じる題材を教材として扱い,国語科の実践を行った.また,少人数学級の課題である多様な価値観を得る機会の少なさに対して,ペア活動やグループ活動など一人ひとりの考えを共有できる活動を取り入れた.実践 3 では,対象児童 1 名の少人数学級において,日常のメディア活用を踏まえ,他学年児童や教職員等との対話的な活動を取り入れた道徳科の情報モラルに関する指導の実践を行った.これまでの実践の結果,児童にとって身近な日常生活を題材として扱い,児童が様々な人と対話することを通して多様な視点を得ることで,互いの考えに共通点や相違点に見出したり,考えを比較・関係づけたりする様子が見られた.また,新たな考えに気付く様子も見られるようになり,日常生活を題材とした多様な人との対話が,児童の考えの広がりにつながったと考える.

川﨑弘太郎小型コンピュータを使ったプログラミング教育の授業実践を短時間でイメージできる大学生のための動画教材の開発

本研究の目的は教員養成課程の大学生が短時間で小型コンピュータボードを用いたプログラミング教育の授業をイメージすることができる動画教材の開発である。そのために、プログラミング教育の授業実践と動画教材の開発を行い、長崎大学教育学部の4 年生の 13 名に教材を使用していただき、アンケート調査を行った。その結果、短時間の動画教材によって小型コンピュータボードを使ったプログラミング教育の授業実践をイメージすることができることが明らかになった。一方で、動画教材の改善点も明らかになった。

庄野乃莉香離島・へき地の小学校で勤務する教師の教育への熱意に影響を及ぼす要因の検討

本研究の目的は、離島教育に興味関心のある大学生の離島勤務に対するさらなる熱意向上のため、離島・へき地の教員生活の中で教育への熱意を向上させた要因について整理することである。そのためにまず、教育学部小学校コース 1 年生後期の選択科目講義である、「離島と教育」の講義を受講した離島教育に熱意のある大学 3 年生 4 年生に講義を受けて離島教育についてもっと知りたいこととして何を思っているのかインタビューを行った。その結果、離島で勤務している教員の実際の声を聞きたいということが一番多く挙げられた。そこで、小学校教員として離島・へき地で勤務経験のある人の教師人生のライフヒストリーを、Workline 手法を用いて「見える化」したものを基にインタビューを行い、時期、年、出来事などの観点から離島・へき地の教員生活の中で教育への熱意を向上させた要因を整理した。その結果、離島・へき地の教員生活の中で教育への熱意を向上させた要因として 5 人の教員に共通して言えることとして地域の温かさや、子どもとの関りの深さ、また、それぞれの教員が感じていること・要因について整理することができた。

早田菜々子教員養成の大学生を対象とした間接指導の知識獲得のためのウェブサイトの開発

本研究の目的は,小型携帯端末での活用を想定した複式学級での間接指導を学ぶ大学生のためのウェブサイトを開発することである.そのために大学生が求めている間接指導に関する知識を事前に調査した.調査結果を KJ 法により「学習指導案の作成」「ガイド学習」「間接指導の充実」「教材・教具・板書」「発問・指示」の5つに分類し,これをもとにウェブサイトを開発した.その後ウェブサイトの改善のため,大学生に対し,ウェブサイトを活用してみての感想,長所,改善すべき点の3点に絞ってインタビューを行い,総合的に評価した.感想においては,「自分にも複式教育ができるかもしれない」「複式教育に対する抵抗感や不安が薄れた」等といった意見があり,複式教育に対するイメージを肯定的なものにすることができた.長所においては,「参考になる URL をピックアップしてくれているところがよい」「パソコンを開かなくても手軽に学べるところがよい」等といった意見があり,大学生のニーズに特化したウェブサイトであることから有意性がみられた.このような結果から,間接指導に対する知識獲得の支援ができたことがわかった.改善すべき点においては,「本人の経験談やアドバイスを示してほしい」「長崎県の実践例や他の教科の実践例もたくさん見たい」等といった意見があり,すでに実在している情報のみならず,同じ学生のリアルな体験を知りたい,授業実践例をたくさん見て参考にしたいと思っていることがわかった.このような改善すべき点を踏まえて,修正を行い,最終的なウェブサイトを完成させた.

又見楓子模擬授業において自身と異なる個性を持つ児童の役割演技が大学生の児童理解におよぼす影響

本研究の目的は,模擬授業中に児童役の大学生がイメージカードを用いて役割演技をする際,演じる児童の個性の違いによって,大学生の児童理解におよぼす影響を明らかにすることである.上記の目的を達成するために,イメージカードを用いた役割演技をする際に,自分と“近い個性”の児童を選択し演じる統制群と,自分と“異なる個性”の児童を選択し演じる実験群の2つに児童役の大学生を分けた.模擬授業後,再生刺激法を活用しながらインタビュー調査を行い,役割演技を通しての気づきや発見,教師の立場から意識・考えたことなどを聴き取った.そこから得られた語りをまとめ,仕分けた結果,自身と“異なる個性”の児童を選択し演じた実験群の大学生からの方が多くの視点による多様な意見を得ることができた.このことから,イメージカードの児童と演じる大学生自身の個性の違いに幅があるほど視点が増え大学生の児童理解にあたえる影響が大きい可能性が明らかとなった.

森田景教員養成段階における遠隔協働学習の模擬授業および学習効果の検討

本研究の目的は,教員養成大学におけるグローバル化をめざしたオンライン国際交流のモデルシラバスの開発である.長崎大学では現在,ハワイ大学マノア校と長崎大学教育学部の間でCOILを計画中である.しかし実際のモデルシラバスは存在しない.よって,ハワイ大学マノア校と長崎大学教育学部の間でCOILを実現するためにモデルシラバスが必要だと考えた.最初に仮のモデルシラバスを検討し,ハワイ大学の教授とハワイ大学の授業を受講したことのある人物にインタビューを行なった.そしてインタビュー結果をもとにデザインしなおしモデルシラバスの開発を行なった.インタビューから,2つの大学の学生同士がどのように協働して学習を進めていくのかや,授業目的に関する改善点を見つけることができた.

2018年度

松永千茄少人数学級においてリアクションフレーズを用いた相手意識をもたせる小学校外国語活動の授業デザインと実践実践研究報告書

本研究の目的は,少人数学級における相手意識を育むための小学校外国語活動の授業デザインの提案である.そのために,相手の話に対して理解を示したり,うまく相手の話を引き出そうとしたりする活動を支援するリアクションフレーズを作成し,それを用いた授業をデザインした.さらに,デザインした授業を実際の少人数学級で実践し,児童の相手意識に焦点を当てて,授業内容を検討した.その結果,場面・状況が設定された言語活動の中で,相手への感謝や反応に関する児童のコミュニケーション場面が見られた.その一方,尋ね返すような活動をする児童のコミュニケーション場面は,やりとりが少し見られたものの,今後の改善が必要であることがわかった.

江島嵩瑛小学校プログラミング教育の授業企画を目指した高等教育のための学習デザインの開発と実践

本研究の目的は,小学校授業におけるプログラミング教育の実践を目指した大学での学習デザインを開発し実践することである.そのために,長崎大学教職大学院生 16 名を対象に実践し,アンケート調査を行った.その結果、今回提案した学習デザインは,小学校プログラミング教育における題材案を持つことができるということが示された.しかし,本学習デザインの受講により、新たな懸念材料が生まれることも明らかとなった.

小川祐輝視覚的・聴覚的な効果を取り入れた反転学習用ビデオ教材の簡易作成を支援するガイドブックの開発

本研究の目的は,視覚的・聴覚的な効果を取り入れた反転学習用のビデオ教材作成を支援するガイドブック(以下,ガイドブック)を開発することである.そのための手段として,ビデオ教材の撮影時に生じる失敗を解消したり,視覚的・聴覚的にわかりやすくなるようなビデオ教材に仕上げたりするための動画編集の方法を記載したガイドブックを開発した.その後,開発したガイドブックの評価(以下,調査)を行った.調査では,教員養成課程の大学生を対象に,ガイドブックに対する自由記述によるアンケート調査を実施した.その結果,今回開発したガイドブックは,明白であり,使用してみたい等の肯定的な結果をえることができたため,簡易作成を支援するガイドブックになったと示唆された.

金子昌弘教員養成課程の大学生における情報活用能力育成のための指導力に関する調査と分析

本研究の目的は,教員養成課程の大学生における情報活用能力育成のための指導力に関する実態を示すことである.そのための手段として,情報活用能力の 3 観点 8 要素に焦点を当てたアンケートを作成し,教員養成課程の大学生を対象に実践をした.その結果,情報活用能力の活用・理解,情報活用能力を育成する指導の両方で主に「情報社会に参画す態度」の分野に対する大学生の自信が最も高く,次いで「情報活用の実践力」の分野,そして「情報の科学的な理解」の分野に対する大学生の自信が最も低いことが示された.

高鍋紗智子小学校の複式学級においてユニバーサルデザインによる教室環境づくりを支援する若手教員のためのガイドブックの開発

本研究の目的は,ユニバーサルデザインによる,複式学級の教室環境づくりを支援するためのガイドブックを開発することである.そのためにまず,複式学級の担任経験のある現職教員と,複式支援員にインタビュー(以下,事前調査)を実施した.そして,ガイドブック「すぐに実践できる,複式学級におけるユニバーサルデザイン教育スタートブック~教室環境編~」を開発し,大学生が教員になった際すぐにでも実践できるか評価(以下,調査)を行った.事前調査であるインタビューを実施する前に,いくつかの自治体のユニバーサルデザイン教育のガイドブックを整理して,質問項目を「掲示物」「聴覚刺激」「座席」の3つに限定した.事前調査では,複式学級でユニバーサルデザインを実施するにあたって困難な点と工夫した点について,結果が得られた.この結果をもとにしてガイドブックを開発し,質問紙によるアンケート調査を行った.その結果,このガイドブックは教員 1 年目でも実践できそうであり,ユニバーサルデザインによる複式学級の教室環境づくりを支援できるものであると示唆された.

田川佑弥教師と児童の活動を振り返るための全天球カメラを用いたマイクロティーチングのデザインと実践

本研究の目的は,全天球カメラで撮影した動画を省察時に活用する教師と児童の活動を振り返るためのマイクロティーチングをデザインすることである.そのために,デザインしたマイクロティーチングの実践を行い評価した.評価方法は,実践に参加した教員養成課程の大学生および大学院生 19 名を対象に質問紙によるアンケート調査を行った.その結果,マイクロティーチングの活動においては肯定的な意見が多く見られた.一方,全天球カメラの活用に関する面では肯定的意見と否定的意見の両方が得られ,より全天球カメラの持つ利点と授業省察という活動を相互に活かす工夫が必要であることが示された。

徳永瞳小学校低学年児童を対象としたネット依存予防のための家庭教育用紙芝居型教材の開発

本研究の目的は, 小学校低学年児童を対象としたネット依存予防のための教材開発を行うことである.その手段として,まず,児童がネット依存を自分事として捉え,ネット依存にならないように気をつけようとする意識付けを行うことをねらいとした紙芝居型教材を開発した.そして,5名の小学校低学年児童保護者の方に,お子さんに向けて実際に使用してもらい,その後,アンケート調査を行った.アンケートの結果, 本教材はネット依存状態の表現の仕方に関しては,まだ改善の余地が見受けられたものの,家庭で使いやすい教材であり,ネット依存予防のきっかけとなるものであるという事が示唆された.これらの意見を基に,最後に,本教材の改良を行った.

西田鈴香児童の授業視聴中のノートテイキングを支援する反転授業用ビデオ教材作成ワークショップの実践

本研究の目的は,教員養成課程の大学生のためのノートテイキングを支援する反転授業用動画作成のワークショップを実践することである.そのための手段として,ノートテイキングを支援する反転授業用動画作成ワークショップをデザインした.その後,教員養成課程の大学生 8 人を対象にワークショップを実践し,ノートテイキングを支援する反転授業用動画が作成できたかを検討した.ワークショップを受けた学生に質問紙と自由記述によるアンケート調査を行った結果.ノートテイキング,ワークショップに関する全項目において,肯定意見が多い傾向が得られた.またアンケートの自由記述においては肯定意見以外に,今後の課題となる意見も得られた.そのため,本研究では教員養成課程の大学生が子どもにノートテイキングを支援できる反転授業用ビデオ教材の作成を行うことができた.

2017年度

生嶌夏希子どもの実生活と結びつけながら展開する小学校外国語活動の実践実践研究報告書

本実践報告書では,外国語活動において実生活と結び付けた題材を用いることで、子どもの「話したい」という発話への意欲を高めることを目指した3つの実践を報告する.1つ目は,身近な地域をイメージしながら道を尋ねたり案内したりする日常を想定したコミュニケーションを意識した外国語活動を行い,子どもたちの積極的な活動を見とることができた.2つ目は,外国語活動ではないが,子どもたちの身の回りに存在するローマ字を題材とした授業を実践し,子どもたちの自発的な気づきを促すことができた.3つ目は,ARCSモデルを用いた単元計画をデザインし,単元を通して動機付けを意識した実践することができた.3つの実践を通して,子どもたちの実生活に結びつけた題材は知的好奇心を高めることに有効であると感じた.今後は,子どもの実態に見合うような活動の難易度を仕組むことで,子どもに自信や達成感を持たせる実践を目指す.

山越翔陽子どもの伝えたい気持ちを引き出す小学校外国語活動の実践実践研究報告書

小学校外国語活動において、伝えたい思いを英語で伝えることができないことを解消する授業を目指して、授業実践を行った。実習1では、児童のコミュニケーション活動の様子を観察した。実習2では、コミュニケーションに必然性をもたせることをねらいとして授業実践を行った。実習3では、扱う表現が実際に使われている場面を意識してコミュニケーションの必然性を考えた実践を行った。実習4では、児童のコミュニケーション活動を中心に観察することに加え、児童のコミュニケーション実態を把握するために調査をおこなった。その結果、児童はコミュニケーションに困難が生じた際に日本語に頼ってしまう傾向があるとわかった。実習5では、実態調査を踏まえて、日本語に頼らずに伝えたいことを伝える活動を行った。その結果、子どもたちは、日本語に頼ることなく、伝えたいことを既有知識で伝えることが可能であることに気づくことができた。

園友里恵反転学習用ビデオ教材の簡易作成を支援するガイドブックの開発と評価

本研究の目的は,反転学習用のビデオ教材作成の簡易作成を支援するガイドブック(以下,ガイドブック)を開発することである.そのための手段として,教員養成課程の大学生を対象に負担要因の調査(以下,調査1)を行い,その負担要因を軽減するためのガイドブックを開発した.その後,ガイドブックの評価(以下,調査2)を行った.調査1で,質問紙によるアンケート調査を実施した結果,設置方法,声量の調節,明るさなど環境面と教師の言葉かけなどの対応が負担要因であることが明らかとなった.調査2では,調査1の結果を踏まえ,撮影前の準備段階の負担を軽減することを目的とした簡易作成を支援するガイドブックを開発し,その後質問紙によるアンケート調査を実施した.その結果,今回開発したガイドブックは,理解度,自信,簡易性において肯定的な結果となったため,簡易作成を支援するガイドブックになったと示唆された.

高木政也授業づくりを通して食育のイメージ形成をめざすワークショップの実践と評価

本研究では、教科の中に食育を取り込んだ実践が少ないことや食育に関して教員養成課程の段階で学ぶ機会が少ないことなどの背景により、教員となる大学生を対象に授業づくりを通して教科の中に食育を取り込んだ授業のイメージ形成をめざすワークショップを行った。ワークショップ実践後のアンケートでは事前アンケートと事後アンケートの平均点の差について有意差を得られ、アンケートの記述欄においてイメージを持つことができたなどの回答を得ることができた。そのため、本研究では教科の中に食育を取り込んだ授業のイメージ形成を行うことができた。

三根拓真初等教育でのプログラミング教育の導入時における言葉の表現に関する検討

本研究の目的は,初等教育におけるアンプラグドコンピュータサイエンス(以下,CSアンプラグド)を含めたプログラミング教育の段階的学習法を提案することである.そのために,長崎大学教育学部生13名を対象に実践し,アンケート調査を行った.その結果,今回提案した段階的学習法は,CSアンプラグドからプログラミングへ移行する際のつまずきが少ないものであることが示された.しかし,プログラミングそのものを簡単にするものではないことが明らかとなった.

椋尾宗大郎小学校外国語活動における継続的な遠隔共同学習を行った児童の意識調査

現代における人口減少の問題により、小規模校・小規模学級の増加が問題視されている。その対策として、ICT活用強いてはテレビ会議システムによる遠隔共同学習が効果的であるとされている。しかし、遠隔共同学習が長期間継続的に教科の中で行われるといった活用についてはあまり明らかにされていなかった。そこで、外国語活動において継続的に遠隔共同学習を行った学校の児童に対しアンケートを行い、授業に対する児童の意識を分析した。肯定的意見として多様な意見に触れ、学びに深まりが出るなどの学びの質の向上が見られた一方、否定的意見では機器のトラブルなど不安要素も見えた。中でもコミュニケーションは両意見で出されており、教科における継続的な遠隔授業が教科目標の達成を果たし、表現力を育む機会になる事を示した。

山本愛夏小学校外国語活動において目標言語に基づくコミュニケーション能力育成のきっかけとなる教材開発と評価

本研究の目的は,小学校外国語活動における方略的能略の育成のための一つのきっかけとなる教材開発と,その教材の使用者の意見を分析することである.その手段として, L2based-strategy(第二外国語を使用するコミュニケーション能力)を使ってコミュニケーションを図ることができる,という事が分かることをねらいとした教材を開発した.そして, 9名の長崎大学教育学部生を対象に,実践しアンケート調査を行った.その意見を元に実際の教育現場で使用できるように教材を改良する.アンケートの結果,教材は使いやすいものであり,意図しているねらいも児童に伝わるものだという事が分かった.よって本教材は,小学校外国語活動で使用できる教材であるという事が示唆された.

2016年度

笹本健太中学校理科において伝え合う学びの実現を目指した授業デザインと実践研究」【実践研究報告書】

近年の子どもたちに対して,表現や伝達に関する資質・能力が求められている.このことから,相手にわかりやすく情報を伝えるための資質・能力(以下,伝える力)が必要であると考える.本実践研究の最終目的は,子どもたちの伝える力の向上のため,自分の持っている情報を生徒同士がわかりやすく伝え合う活動(以下,伝え合う学び)を継続して実現することである.そのため,伝え合う学びの初期段階に焦点を当てた授業を,デザイン研究の手法を用いて検討した.そこで,ジグソー学習を参考にした伝え合う学びをデザインし実践した結果,伝え合う学びの機会を確保し,生徒が自信を持つことに繋がった.しかし,「分かりやすく伝えることができていない」という伝える側の課題が残った.この結果を踏まえ,伝える側の発表を支援した上での伝え合う学びをデザインし実践した結果,伝える側が感じる発表への負荷を軽減できた.

池田優香遠隔合同授業の初期における阻害要因の解消を目指したオリエンテーションの設計と実践

本研究の目的は,テレビ会議システム(以下,システム)を使った授業の初期における学習への阻害要因を取り除くオリエンテーションを設計し実践することである.そのために,初回の授業において子どもが持つ阻害要因の調査(以下,調査1)後,その阻害要因を解消するためのシステムを活用したオリエンテーションを実践し検討する(以下,調査2).調査1で,質問紙によるアンケート調査を実施した結果,システムを使った初期の授業を受ける子どもにおいて,コミュニケーションや緊張,画面などに関する不安がみられた.調査2では,調査1の結果をふまえ,相手が持つ情報を集めて答えを導き出すアイスブレイク形式のオリエンテーションを設計し,その実践の前後に質問紙によるアンケート調査を実施し検討した.その結果,今回設計したオリエンテーションは,情意面に関する不安とシステムのカメラに関する不安を解消できることが示唆された.

上田直輝情報活用能力の育成を目指した教材開発と散在した情報を収集する行動の分析

本研究の目的は、情報活用能力の育成の手掛かりを得るため、散在した情報を収集する力の育成を目指した教材の開発と、散在した情報を収集する行動の分析である。そのために、防災に関する内容を題材とし、必要な情報を収集することを通じて散在した情報を収集する力の育成をねらいとした教材を開発した。この教材を用いて 15 名の長崎大学教育学部生を対象に試行し、アンケート調査と教材を使った学習時の行動を分析した。その結果、教材は使いやすいものであり、小学生が操作できる可能性が示唆された。また、誤答者は時間をかけて1つのページを閲覧していないことがわかった。そして、正答者は全てのページを満遍なく閲覧する傾向がわかった。

江口理子離島教育に関するイメージ形成を目指した大学生を対象とする授業デザインと実践

本研究の目的は,長崎大学教育学部の 1 年生(以下,学習者)に対し,離島教育についてのイメージを形成する学びを実現することである.そのために,Kolb の経験学習モデルを参考にデザインした授業を実践し,評価を行う.まず,離島実習を経験した大学 4 年生(以下,離島実習経験者)4 名をゲストティーチャーとして招き,学習者の離島実習経験者が交流する授業をデザインした.デザインした授業を実践し,質問紙による 4 件法のアンケート調査と振り返りシートから学習効果を検討した.その結果,今回の実践において,学習者が離島教育についての理解・イメージ形成・興味の内容に関し,情意面における一定の効果がみられた.また,振り返りシートから,離島実習経験者の話す内容が学習者の振り返りに大きな影響を与える傾向がみられた.このことから,離島実習経験者の話す内容と学習者自身の考えの両方を振り返る活動が,今後必要であると考えられる.

大場琴美小学校理科における能動的な学びを目指した島原の湧き水を教材とする授業デザインと実践

本研究の目的は,島原の児童が能動的に島原の湧き水の仕組みや特徴を説明できることを目指した小学校理科の授業を実践することである.そのために,児童が能動的に学ぶことができる知識構成型ジグソー法を参考にして授業をデザインし,実践した.そして,実践後に質問紙による4件法および自由記述式のアンケート調査や授業中のワークシートを分析し,検討した.その結果,本実践は児童に島原の湧き水について興味関心を持たせることができ,主体的・対話的で深い学びができる可能性が示された.また,本実践により島原の湧き水の仕組みや特徴に対する児童の知識の変容が見られ,島原の湧き水の仕組みや特徴を説明できる学びが実現できた.

佐々木佑奈校務の情報化における大学生の不安軽減を目指した e ラーニング教材䛾開発と評価」

本研究䛾目的䛿、教員を目指す大学生䛾校務䛾情報化における不安を軽減するeラーニング教材を開発することである。そ䛾手段として、1)学習内容を検討するために小学校教員と大学生を対象に校務䛾実態と IC㼀 活用能力䛾実態調査を行ったあと、 2)大学生を対象としたeラーニング教材を開発し、3)開発した教材䛾評価を行った。調査方法䛿、開発したeラーニング教材䛾活用を体験した大学生を対象に、アンケート調査を行なった。そ䛾結果、開発したeラーニング教材䛿大学生䛾 Excel 䛾活用に自信を持たせ、校務に対する不安を軽減する可能性が示された。また、校務で䛾 Excel 䛾活用に対するイメージを持たせやすいということが示唆された。

高木志織小学校外国語活動でのICT活用に関する学習効果と課題の類型化

本研究は,小学校外国語活動での ICT 活用における論文や学会発表で示された学習効果と課題からの類型化と分析を通して整理し,小学校外国語活動に対して効果的に ICT を取り入れるための手がかりとなる基礎資料を提示することを目的とした。研究方法は,小学校英語教育学会の学会誌と全国大会発表資料をもとに,小学校外国語活動と ICT 活用に関する論文の中で述べられている学習効果と課題について分類を行なった。41 件の論文の中に学習効果は 81 項目述べられてあり,キーワードごとに 14 の観点に分類を行った。観点として「意欲・関心」「コミュニケーション」「ICT 活用のスキルアップ」「自信・慣れ・慣れ親しみ」「集中力」「語彙習得」「応用力」「多様なものの見方」「内容理解」「聞く力」「書く力」「教師のスキルアップ」「作業時間短縮」「その他」に分類できた。また,課題について,41 件の論文の中に課題は 22 項目述べられてあり,キーワードごとに 11 の観点に分類を行った。観点として「利用の難しさ」「コミュニケーション能力の向上」「ICT環境の整備」「指導法の確立」「授業時間数・時期・学年の検討」「新たな教材開発」「ICT機器の使い方や知識の習得」「英語教育関連の情報収集」「ICT 機器を使用した授業設計」「実践効果の確実性の検証」「教員が ICT 機器を使いこなすための研修の充実」に分類できた。これらの分類を整理し,基礎資料を提示することができた。

前川遥黒板での授業の拡充を目指したハイブリッド黒板アプリの活用に関するe ラーニング教材の開発と評価

本研究の目的は,教師がハイブリッド黒板アプリを用いて黒板での授業を拡充するための一助となる e ラーニング教材を開発し,教師の ICT 活用に関する意識を高めることである.e ラーニング教材の開発では,Kocri の基本的な機能や操作方法についての動画教材(コクリ機能説明)を開発した.また,指導方法に沿った Kocri の活用事例の動画教材(指導方法に沿ったコクリの活用事例)も開発した.これらの e ラーニング教材を iTunes U へのアップロードし,開発した e ラーニング教材を視聴,使用してもらい,その後アンケート調査を実施した.その結果,開発した e ラーニング教材に対して高い評価を得られた.また,Kocri に関する e ラーニング教材は Kocri の使用への意欲と自信を持たせることが明らかとなった.

2015年度

前田拓也中学校社会科における生徒が主体的にタブレット端末を活用する授業デザインと実践【実践研究報告書】

(2015年度の実践研究報告書はアブストラクトを書かない書式で執筆されたため,ここでは割愛いたします)

川口美紀学校へのタブレット端末導入時に必要な校内研修のデザインと,教師の働きかけに合わせたICT活用方法の調査

本研究は, 学校へのタブレット端末導入時に必要な校内研修のデザインを行い,実践後に評価を実施した.また,実践での活動から教師の働きかけに合わせた教科ごとのICT活用方法について調査した.今回の研究の目的は,小学校においてタブレット端末導入時に効果的なICT活用のアイディアを整理する校内研修をデザインすることを目的とする.そのために,デザインした校内研修を実践し,整理されたICT活用のアイディアを分析することを手段とする.研究方法は,教育理論を踏まえたワークショップ形式の校内研修のデザインを行い,研修前と研修後にアンケート調査を実施し,今回のワークショップの内容と感想について評価と意見を得た.評価は,研修の事前と事後にアンケートを行うことで研修を受けての意識を比較し,研修の内容についての意見を得るというものである.小学校教諭34名のアンケートを集計した結果,今回の研修だけでは,校内研修を行うという自信までをつけることができなかった.しかし,今回のワークショップの内容は,校内研修で使えそうだという評価を得ることができた.さらに,ワークショップの活動によって得られた意見を分析した結果,「カメラ」「ビデオ」「拡大提示」の3つの活用が多いということが明らかとなった.今回の1回だけの研修においては,受講者自身が校内研修を行うという自信までをつけることができなかったが,今回のようなワークショップの研修を継続的に行う必要があると考えられる.

大力優樹疑似LINE教材を活用したゴールベースシナリオ理論に基づく授業デザイン

本研究は,現在の社会状況から情報モラル教育の充実を推進するため,体験的に学習できる疑似LINE教材の開発を行い,疑似LINE教材を活用したゴールベースシナリオ理論に基づく授業のデザインの提案を目的とする.研究の方法として,初めに児童生徒が体験的に情報モラルを学習することができるようにするための疑似LINE教材をパワーポイントで開発し,疑似LINE教材を活用したゴールベースシナリオ理論に基づく授業を設計,提案した.評価においては,ゴールベースシナリオ理論のチェックリストとアンケート調査でおこなった.結果から,疑似LINE教材を活用したゴールベースシナリオ理論に基づく授業において,GBS理論の妥当性と教育現場で活用することのできる可能性が明らかとなった.

藤谷紗奈「校紙とタブレットPCを併用した協働学習の実践と学習者の意識調査

本論文は、学習デバイスとして、紙とタブレットPCを取り上げ、各媒体を併用し発表活動を行う授業実践において、長所を活かし、短所を相殺することができるかということを調査した結果について述べている。アンケートを実施して、各媒体のメリット、デメリットや紙とタブレットPC併用した所感を数値評価や記述評価してもらい、その結果について考察し、課題を明らかにした。今回の実践では、各媒体のメリット、デメリットについて数値評価を行い、17項目中15項目で各媒体のメリットを強く感じられ、デメリットをあまり感じないという結果を得ることができた。このことから、各媒体のデメリットの大部分を相殺できたと言える。また、紙とタブレットPC併用した所感についての記述評価においては、ポスターでは、概要を説明し、内容を明示したという回答が多かった。タブレットPCでは、機能の紹介、操作方法に使ったという回答が多かった。「ポスターがあることにより、目線が上がり、話しやすい」、「タブレットPCで実演するとわかりやすい」などの記述があったことから発表活動がしやすくなるという効果もあったと推測できる。以上のことから、「手書きメモアプリの授業における活用」という授業テーマにおいて授業を行う際は、タブレットPCとポスターの併用が好ましいと言える。

益永佳織熟達者の授業方略を取り入れた算数科における動機付けリーフレットの作成と評価

本研究は、将来小学校教員になることを志望している大学生の、学習意欲を高める算数の授業を展開する上での不安を解消する一助となる、熟達者の方略を取り入れたARCSモデルに基づいた動機付けリーフレットの作成をし、その評価を行うことを目的としている。 事前アンケートを実施し、その結果を受けて、10年以上の小学校教員歴を持つ教師に対してARCSモデルに沿った授業実践例を調査した。その回答結果をもとに、ARCSモデルを用いた学習意欲を高める算数の動機付けリーフレットを作成した。完成したリーフレットを大学生に閲覧してもらい、アンケート調査を実施した結果、今回作成した熟達者の方略を取り入れたARCSモデルに基づいたリーフレットは、大学生が、学習意欲を高める算数の授業を展開する上での不安を解消することが明らかとなった。動機付けリーフレットを閲覧後に実施したアンケート調査の結果から、作成したリーフレットの良い点が多く明らかになったが、それと同時に改善点も指摘されたため、動機付けリーフレットの構成やデザインを変更し、改善を行った。

武藤春佳特別支援教育での情報モラルにおける大学生に向けた三者連携を促す授業デザイン

「教育の情報化に関する手引き(文科省2010)」で「学校における情報モラル教育と家庭・地域との連携」が推進されており,特別支援教育においても同様である.そこで本研究では,特別支援教育での情報モラルにおける三者連携に対し,大学生の積極的な態度を育成するための授業を設計することを目的とする.特別支援学校における情報モラルに関する保護者からの問い合わせを把握するため,特別支援学校に勤務する教員23名にアンケート調査を実施した.その結果,知的障害が最も多く情報モラルに関するトラブルが起きていることが明らかとなった.よって,授業設計の内容を「発達障害児に対しての情報モラル教育」とする.また,本研究では「グループ間の合意形成をゲームとした課題探究学習方式(辻2015)」を基に授業設計を行った.模擬実践では大学生3・4年生を対象とし,本実践では大学1年生を対象として,情報モラル教育で三者連携を促す授業デザインの実践を行った.本実践では,17名分の有効回答数を得た.その結果,地域に関する項目『地域(メディア指導員)と連携できると思う.』『地域の立場を理解してお互いに協力できると思う』で,5%の有意水準で,事前の平均評価値に比べ,有意であった.地域に関する項目で有意差が出たのは,今まで知らなかったメディア指導員について理解でき,学校現場に講師として招きやすいと感じたのではないかと考えられる.また,三者連携に関する項目については,有意傾向であった.また,『発達障害児に対する情報モラル教育』『三者連携に関してもっと学びたい』という項目で正確二項検定を行ったところ,「肯定回答」が「否定回答」に比べ高く,有意な差が見られた.これらのことから,「三者連携のイメージが湧いた」とあるように,特別支援教育における情報モラル教育で,三者連携を促す学部生のための授業設計としての可能性が示唆された.